飲み込みにくい・むせやすい方へ 高齢者の口腔機能低下と誤嚥予防のポイント

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~西宮北口駅前歯科が伝えたい、命を守る「食べる力」のお話~

はじめに

「最近、食事中によくむせるようになった」
「飲み込みにくくて、水を飲むのも怖い」
「なんとなく声がガラガラしている」

こういった症状が、高齢者の方に見られることはありませんか?
それは加齢による自然な変化と思われがちですが、実は口腔機能の低下や**嚥下障害(えんげしょうがい)**という、身体の重要なサインかもしれません。

私たち西宮北口駅前歯科では、日々多くの高齢患者様の診療を行う中で、「口から食べる」ことの大切さを実感しています。口腔機能の衰えは、生活の質(QOL)や寿命にも直結する重要な問題です。

この記事では、誤嚥や嚥下障害、オーラルフレイルの基本から、実際の予防策、当院での取り組みまで、わかりやすく丁寧に解説します。


第1章:口腔機能ってなに?「食べる力」は口から始まる

口腔機能とは、口を使って「噛む」「飲み込む」「話す」「感じる」といった生きるために欠かせない働きのことを指します。具体的には以下の機能が含まれます。

  • 咀嚼(そしゃく):食べ物を細かくすり潰す動作
  • 嚥下(えんげ):喉を使って飲み込む動作
  • 構音:話すときの発音の調整
  • 唾液分泌:消化や口腔内の自浄を助ける
  • 感覚機能:味覚・触覚・温度の知覚

これらの機能がスムーズに働くことで、人は「美味しく食べ」「はっきり話し」「社会生活を送る」ことができます。


第2章:口腔機能が衰えると、どうなる?

口腔機能が低下すると、以下のような日常の困りごとが起きます。

  • ・食事に時間がかかる、疲れる
  • ・よくむせる、水を飲むのが怖い
  • ・舌や口唇の動きが鈍く、言葉が聞き取りづらくなる
  • ・よだれが出る、口の中が乾く
  • ・食欲が落ち、栄養不良・体重減少へ

特に、「食べることが怖くなる」と、心理的な食欲低下も起き、体全体の衰え=フレイル(虚弱)に直結します。

「口の衰え」=オーラルフレイル

オーラルフレイルとは、「加齢に伴って口の機能が衰え、身体的な虚弱につながる一連の過程」のことです。

最初は「滑舌が悪くなる」「硬いものを避ける」「食べこぼしが増える」といった小さな変化ですが、それが進行すると…

  • ・嚥下障害
  • ・栄養不足
  • ・体力・筋力低下
  • ・認知機能の低下
  • ・要介護状態

といった深刻な状態に発展する可能性があります。


第3章:誤嚥とは?誤嚥性肺炎の恐ろしさ

誤嚥とは?

「誤嚥(ごえん)」とは、本来は食道に行くべき食べ物や唾液が、誤って気道に入ってしまうことです。

健康な人でも、水を飲んでむせることはありますが、高齢者や病気の影響で飲み込み機能が弱っていると、頻繁に誤嚥を起こすようになります。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥によって、唾液や食べ物に含まれる細菌が肺に入り、炎症を起こすと「誤嚥性肺炎」が発症します。これは日本の高齢者の死亡原因の上位に位置し、特に寝たきりや認知症の方に多くみられます。

しかも、**食事中の誤嚥だけでなく、眠っている間の不顕性誤嚥(むせないタイプの誤嚥)**もあるため、見逃されがちです。


第4章:飲み込みにくさをチェック!セルフチェックリスト

以下の項目に該当する場合、嚥下機能が低下している可能性があります。

✅ 食事中によくむせる
✅ 錠剤や水が飲みにくい
✅ 食べ物が口に残る
✅ 声がガラガラすることがある
✅ 舌が動かしづらい
✅ 食事が楽しくない
✅ 体重が減ってきた
✅ 疲れて食事を途中でやめることがある

ひとつでも当てはまる方は、ぜひ一度、歯科医による検査をおすすめします。


第5章:家庭でできる!誤嚥予防の7つの習慣

1. 姿勢を整える

→ 椅子に深く座り、足の裏を床にしっかりつけましょう。顎を軽く引くことで、誤嚥防止効果が高まります。

2. 食前の嚥下体操

→ 首・肩のストレッチ、「パ・タ・カ・ラ」体操、舌の体操などが効果的です。

3. 食べ物の形状を工夫

→ 水分にとろみをつける、柔らかいがペーストすぎない食事がベストです。

4. 一口量を少なく

→ 大きなひと口より、小さくして確実に飲み込む習慣をつけましょう。

5. 食後の口腔ケアを徹底

→ 歯磨きだけでなく、舌や頬の内側も清掃しましょう。

6. 水分補給をしっかりと

→ 唾液不足は飲み込みづらさを加速します。こまめな水分摂取が大切です。

7. 定期的な歯科検診

→ 入れ歯の調整や舌の動き、咀嚼筋のチェックは歯科医院でプロに任せましょう。

ご家族の方へのアドバイス

高齢者自身が口腔機能の低下に気づいていない場合も多いため、ご家族の見守りが大切です。

  • ・食事中の様子を観察する(むせ、食べ残し)
  • ・「最近食べにくくない?」とさりげなく声をかける
  • ・一緒に歯科検診に付き添う
  • ・口腔ケアの仕方を一緒に確認する
  • ・介護施設や医療関係者と連携をとる

家族の支援が、誤嚥性肺炎や栄養不良の最大の予防策になることもあります。


まとめ:口の健康は、生きる力そのもの

「口から食べる」ということは、人としての尊厳、生きる喜びに直結しています。
そしてそれを守るために、歯科医療が果たす役割はとても大きいのです。

西宮北口駅前歯科では、地域の皆様が人生の最期まで「自分の口で食べることができるように」を理念に掲げ、口腔機能の維持・回復を支援しています。

「最近むせるようになった」「飲み込みが不安」という方は、どうぞ一人で悩まず、私たちにご相談ください。
専門知識と温かいサポートで、あなたの「食べる力」を支えます。